東日本大震災から10年:米国と日本における災害対策へのテクノロジー活用
One Concern共同創業者兼CEOアマッド・ワニとのQA
東日本大震災から10年の節目にあたり、One Concern共同創業者兼CEOのアマッド・ワニ(Ahmad Wani)は、Japan Society of Northern California (JSNC) の2021年3月9日(日本時間)にオンラインで開催された「イノベーションサロン 」において、これまでの取り組みから得られた知見について語りました。
アマッドによるプレゼンテーションの様子
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※以下発言は、簡潔かつ分かりやすくするために若干編集が加えられています。
次に大災害が起きた時に社会、経済、人命に降り掛かる混乱を軽減できるよう、全世界の都市のレジリエンスを向上させるために、私たちは今何ができますか?
災害が起きるたびに、それがあたかも想定外の出来事のように扱われ、世界は甚大な被害を受けてきました。One Concernは、最初にすべきことは脆弱性とリスクの詳細な分析であると考えています。主な盲点がどこにあるかを理解すれば、そうした災害の影響をどのように軽減すべきかが分かります。
そして盲点を特定し理解するためには、前回の災害を指標にし過ぎないことが大変重要です。なぜなら、まったく同じような被害を及ぼす災害がもう一度起きる確率は限りなくゼロに近いからです。その一方で、とりわけ気候変動によって地球環境と危険要因が常に変化している現在、将来の災害は幾分、あるいは極端に違った形で、私たちに影響を及ぼすでしょう。また、都市は成長し拡大しているため、私たちは変化し続けるシステムに対応することになります。過去を振り返るだけではなく、今後を見据えて将来のリスクを理解し、自然災害に対する十分なレジリエンスを実現しなければなりません。
データへのアクセスはどれくらい容易ですか? One Concernのモデルの構築に必要とされる膨大な量のデータを収集する際、どのような課題に直面していますか?
データへのアクセスは、当社が今後グローバルにソリューションを展開していくにあたって克服すべき大きな課題の一つです。驚くことに、大半の都市は送水管や送電線がどこにあるか把握しておらず、それらをマッピングしていません。それはそうしたインフラがソフトウェアやマップのデジタル化を検討する前に敷設されたものだからです。
都市システムのモデリングとAIを組み合わせることで、さまざまな要因やデータのインプットに基づいて、送水管がどこにあるかを明らかにする合成ネットワークを作成することができます。例えば、過去の暴風雨のデータと、実際に浸水した地域のデータを使えば、雨水排水管の位置をある程度割り出すことができます。
同じ手法を電力ネットワークに応用し、災害発生時にどの地域で停電が起きたかを調べるのに活用できます。こうしたモデルが包含する不確実性を算出するために、各都市の実際のデータを用いた検証が必要ですが、これは特に日本で大きな課題となっています。日本と違って米国では、公共インフラのデータが公開されているため、それほど大きな課題ではありません。米国ではそうしたデータを入手可能なので、モデルをトレーニングし、より迅速に新しい都市に適用できます。もし日本で、そうしたデータへアクセスするためのより明確なデータのプライバシーと共有に関する法律が整備されれば、One Concernの日本での提供ソリューションの拡充や導入スピードは飛躍的に促進されるでしょう。
よりレジリエントな社会を実現するため、企業や金融のシステムは、深刻化する災害にどのように備えることができますか?
リスクの特定や把握をすることだけでは十分ではありません。テクノロジーは唯一の解決策ではなく、解決策の重要な要素の一つであり、テクノロジー、政策、金融メカニズムを組み合わせたアプローチが必要です。また、自然災害に境界線はありません。国や都市、州をまたいでレジリエンスを実現するためには、官民の連携が欠かせません。
レジリエンスの構築にかかるコストを補うにあたっては、リスクの定量化をビジネスモデルに組み込んでいくことで、官民双方の組織からの戦略的なレジリエンス投資を促すWin-Winの状況を作ることができると考えています。
例えば、テキサスでは過去10年間に、これまで500年に1度の頻度で発生する言われてきた規模の災害が3回も発生しています。コミュニティが同じ場所に再建される場合(そういったケースがほとんどですが)、納税者は費用の負担を強いられます。現行の保険では災害による影響が適切に評価されていないため、そのような対応が奨励される形になってしまっています。
そうしたリスクをより正確に評価することができれば、どこにどのように再建すべきか、より適切かつ賢明な判断が下せます。民間企業にとってのメリットという観点で言えば、レジリエンスの高いコミュニティは、結果的に経済的にも健全で安定したものとなります。このようなメリットを実証することが、よりレジリエントな未来に向けた政策や金融のメカニズムを実現するための第一歩となります。
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