テクノロジーの世界で女性のための道を拓く
One Concernの共同創業者 兼 CTOのニコール・フー(Nicole Hu)のインタビュー
One Concernはすべての女性とその功績を称える2021年国際女性デーに賛同しています。今年のテーマである「Choose to Challenge」に合わせて、One Concernではジェンダーバイアスと不平等について声を上げています。One Concernでは、より多様性のある、平等でインクルーシブな職場環境であるよう、常に盲点を明らかにしようと取り組んでいます。現在、One Concernの社員は5大陸、20ヵ国から構成されます。
One Concern共同創業者兼CTOのニコール・フー(Nicole Hu)は技術チームのリーダーで、そのチームの30%以上が女性です。One Concernの創立、テック業界でのこれまでの経歴やジェンダーバイアスについて聞きました。
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Q. One Concernを創立した経緯を教えてください。
One Concernは4、5年前にスタンフォード大学で始まりました。私は共同創業者兼CEOのアマッド・ワニ(Ahmad Wani)と地震科学者のティモシー・フランク(Timothy Frank)と友達でした。その二人とまだ解決されていない大きな問題や根本的な問題が本当に沢山あるよね、といった話をよくしていました。そういった話をしているうちに、ある夏、アマッドが婚約のためにカシミール地方に帰国したことがありました。そして彼がカシミールに滞在中に大洪水が起こったのです。その後スタンフォードに戻ってきた彼とすぐに「これは重大な問題だ」と話し合いました。なぜ洪水がいまだに多くの人々にとって、このような大きな問題になるのか疑問に思いました。私たちは構造工学の世界ですでに作られているものを見て、機械学習かAI(人工知能)を使って問題を解決することを考えました。問題は、災害発生後にどのような被害が起こるのかについてまだわからないことでした。そこで、これを問題提起して取り組むことにしました。
私たちは機械学習と構造工学の2つの授業を受けました。ティムとアマッドの専門は地震工学だったので、まずは地震にフォーカスしました。そして地震による被害を予測するアルゴリズムを構築していきました。私たちの教授陣は、このアルゴリズムがどのような反応が得られるか調査するように勧めました。いくつかの都市の危機管理担当者に問い合わせてみたところ、驚きの発見がありました。私たちの問題提起と取り組みは、非常にインパクトのあるものだと理解していただきました。こういった会話を重ねる中で、このプロジェクトを見届けることは私たちの責任であると強く感じ、起業することにしました。
Q. One Concernは何を提供しているのでしょうか?また、それはどのような価値をもたらすのでしょうか?
私たちは、さまざまな組織、都市、個人が災害によってどのような影響を受ける可能性があるかを判断するのに役立つサービス、RaaS (Resilience-as-a-Service)を提供しています。気候変動の影響は数年後にはどうなっているのか。私たちが組織の意思決定や新たな取り組みをどのように支援できるのか。都市や組織がリスクに備え、リスクそのものやリスクによる影響を軽減するために、どのようなことができるのか。私たちの全体的な目標は、災害が発生した場合に、都市や組織が事前に、あるいは即座に行動を起こすことによって、災害による被害の影響を確実に軽減することです。私たちの提供するデータモデルは、リスクを最小化するのと同時に災害科学をより効率よく、実用的なものにします。
Q. 日本市場向けの製品開発・調整にはどのような課題がありますか?
日本の都市における緊急事態管理の状況を理解すること、そして活用すべき様々なデータソースについて把握することです。アメリカと日本では建物の構造が同じではないことを理解しています。局地的な災害とそれによる影響を見なければなりません。また、アメリカと日本では断層や河川、海岸線の特徴が異なります。レジリエンスソリューションの構築にあたって重要な課題は、建物と自然環境の周りの基礎となるデータを確実に私たちのモデルに取り込むことです。
Q. 女性のエンジニアが不足していることについての課題や、女性がリーダーシップを発揮するためのアドバイスをお願いします。
女性は行動すべきです。エンジニアリングに携わっている女性の数は十分ではありません。自分の目標が自分にできると思ったら、思い切って実現させましょう。
5年前にはまさか自分が起業家になるとは想像もしていませんでした。今振り返ってみると、どれだけ自分の自信が成長したかよくわかります。私の周りには学ぶべき人がたくさんいて、このような機会に感謝しています。もっと大胆に行動してみましょう。周りに助けてくれる人を見つけて、自分を信じて旅に出ましょう。
Q. なぜ、より多くの女性がテック業界に入ることが重要だと思いますか?
女性が入りたいと思うすべての分野でロールモデルとなる人が男女共にいるべきです。テック業界に入った頃は、女性の割合が少なく、メンターを探すのも大変でした。しかし、最初の一歩を踏み出す人がいなければ、今後もこの問題は残ります。その人が情熱を注ぐものがSTEMであろうと芸術であろうと、ジェンダーが妨げになるべきではないと信じています。女性の割合が増えれば、今私たちが目にしているそのギャップを埋める手助けになると思います。
より多くの人とロールモデルが市場にいることで、より多くの人が既成概念にとらわれず、これまで参入しなかった分野に目を向けることを考えるようになります。最初の一歩を踏み出す人が少なくても、それがきっかけとなりより多くの人が前に進んでいくのです。
Q. テック業界で働いてみようと思ったきっかけは何ですか?
私は小さい頃から、数学が好きで、とても得意でした。それで論理的で理解しやすかったコンピューターの授業を受けるようになり、もっと学びたくなって、親にコンピューターをねだったんです。両親はとても協力的で、私に何ができる、できないといった制限をかけることはありませんでした。そういった姿勢にとても感謝しています。そこからは自然と進んでいきました。数学から倫理学に移り、その後も多くの授業を受けました。そうしているうちに「テックはとっても楽しい。もっと追求したい」と思ったのです。
Q. テック業界で働き始めてから何か変化は見られますか?インクルーシブについて目にするようになりましたか?
テック業界の変化について議論されることは良いことだと思います。女性の割合が少ないと認識することが第一歩です。女性をサポートする支持者のネットワークを構築することも影響を与えます。それが男性であっても、別のジェンダーだとしても。数多くの著名な女性やテックリーダーが性差別についてオープンに話すようになり、企業もそういった会話をサポートしています。社会で働く多くの人が、積極的に採用や人事のプロセスを改善しようと動いています。長い道のりでしたが、まだ改善の余地はあります。業界として問題があることを認識し、その改善に向けて努力しています。
私は平等、ダイバーシティ、そしてインクルーシブの推進に重点を置いているOne Concernで働ける事に感謝しています。個人的には、男性であり支えになってくれる二人の創業者に感謝しています。彼らが平等、ダイバーシティ、そしてインクルーシブを必要不可欠なものにしてくれました。
Q. テック業界で働く女性として、これまで直面した課題はありますか?それはどのように克服したのでしょうか?
ロールモデルが少ないと、自分の自信に影響を及ぼします。活躍する女性が少ないと、テック業界で働く女性は苦労する部分があります。ロールモデルがいない状況では「私のような人間が成功するにはどうしたらいいのか?」について考えることが難しくなります。しかし、同僚やチームメートとの会話や周りのサポートに助けられたのは確かです。これまで成し遂げたことを振り返って確認することも、私自身の自信を深めることに役に立ちました。
Q. テック業界で働こうとしている若い女性にアドバイスするとしたらなんと助言しますか?
好奇心を持って、常に学ぶ意欲を忘れずに。きっかけを掴んだら、手放さないように。緊張なんてしなくていいし、失敗したらと考えたりしないように。学ぶべき興味深いことは本当にたくさんあります。最初の一歩さえ踏み出せば、世界は拓けると思います。
Q. これまでにインスピレーションを与えてくれた女性を教えてださい。
私にとっては母が一番の、そして永遠のインスピレーションです。母はとても貧しい家庭で育ち、恵まれておりませんでした。母は小さい頃から働きに出て、家事も勉強もこなしてきました。学費を払う余裕はなかったので、奨学金を頼りに教育を受けてきました。あらゆる面で教育を受けたのは母が家系の中で最初の代でした。母はとても強い女性です。仕事とプライベートをバランス良く保ちながら、常に社会に貢献して向上心を忘れません。母は私のロールモデルです。
Q. 日常においてテック業界のジェンダーバイアスに対してどのように#ChooseToChallengeしていますか?
私はOne Concernでジェンダーバイアスの影響について取り組んでいます。人は皆、固有のバイアスを持っているということを伝えています。そのバイアスによって、時に居心地の悪さを感じることがあると認めることは何も悪いことではありません。最初の一歩はそれぞれのバイアスを認めることです。そして、それについて議論し、データを見て、採用や報酬の観点から結果を検討します。
ジェンダーバイアスを認識することの重要性や、なぜ社内でいまだにギャップが存在しているのかについて、データに基づいた、威圧的ではない方法で会話をして理解してもらいます。私は技術チームという、社内でもある程度大きな部門をリードしています。私が社内全体にバイアスを認識してもらうきっかけを作ることが出来れば、ギャップを埋めていくことができると考えています。
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